分子夾雑の生命化学

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研究者受入報告書 ( A03 公募班 : 武森先生 )

研究者受入報告書

 

愛媛大学先端研究・学術推進機構 武森信曉

 

公募研究A03班の武森信曉は、米国国立高磁場研究所(NHMFL)のLissa C Anderson主任研究員とともに、トップダウンプロテオミクス(分子夾雑環境における包括的プロテオフォーム解析手法)のための高分解能プロテオフォーム分画技術(PEPPI-MS)の開発を進めており、これまでにNHMFLが保有する世界最高性能の超高分解能21 teslaフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計(FT-ICR MS)と開発技術を組み合わせ、高深度トップダウンプロテオミクス解析システムの構築に成功している。さらなる研究の効率化と開発スピードの向上を目的として、2020216日~222日にAnderson博士のグループよりPostdoctoral ResearcherDavid Butcher博士を日本へ招聘した。 

愛媛大学では、PEPPI-MSによる試料分画や、定量プロテオフォーム解析のための内部標準試料の無細胞合成をButcher博士に紹介し、これらの技術習得のための実習をおこなった。さらに紹介技術を活用した共同研究として、Tauタンパク質のトップダウンプロテオミクス解析のための試料前処理法を新たに開発し、Tauタンパク質のプロテオフォームを高分解能に分離することに成功した。

滞在期間を通じて他の国内研究者との交流も積極的におこなわれた。218日には大阪の理化学研究所・生命機能科学研究センターを訪問し、無細胞タンパク質合成研究チームの清水義宏チームリーダーと現在進めている大腸菌リボソームタンパク質成分のトップダウンプロテオミクス研究について、解析結果の詳細な報告と今後の論文化に向けた議論をおこなった。また219日には京都の島津製作所を訪問し、PEPPI-MS法とMALDI-ISD法を組み合わせた新たなトップダウン解析アプローチについての討論をおこなった。 

今回の招聘は公募課題の主テーマである、独自技術を活用した定量トップダウンプロテオミクス解析システムの開発と関連しており、トップダウンプロテオミクスのエキスパートとの技術交流により開発スピードの向上が強く期待できる。今後はNHMFL との共同研究を加速するために、Butcher博士と協力して21 tesla FT-ICR MSによる定量トップダウンプロテオミクスのための解析基盤をNHMFL内に新たにセットアップする予定である。